兼題「春寒」 オンライン火星句会 2022/02/15(火)2022年02月21日 14:12

平野歩夢選手が、北京五輪スノーボード男子ハーフパイプ決勝で金メダルを獲得したものの、<二本目の点数が納得いかなかった。そういう怒り>があったと言います。選手は命をかけているのだから、もっとちゃんと見て採点して欲しいとも。超高難度の技を軽々と演じる様に騙されましたが、下手をすると大怪我をしかねない技ばかりです。命を懸けているというのは、決して大げさな表現ではないでしょう。

ところで、ここで何故こんなことを言うのかというと、俳句を詠む場合も同じだと思ったからです。相手に対する生半可な理解や安易な同情で句作りをしていないか、真剣に自らを反省する必要があると思ったことでした。

さて、コロナ禍の出口もまだ見えない昨今、今回もオンラインでの句会でした。21名、63句が集まり私も3句投句しましたが、ここに掲載できるのは下の1句だけでした。

 

 春めいてバスを待つ間の軽いキス

春-春めく この句はお一人の方から特選を頂き、紗希先生も入れてお二人の方から並選を頂きました。<軽やかで明るい「春めく」という季語にぴったりの一コマ。柔らかな風と光がバス停の街を包んでいるようです。>とは、特選を下さった方の批評。「春めく」という季語に触発されて、想像の翼を膨らませて作った句だとお気づきになっていらっしゃるようです。若い恋人同士でしょうか、バスを待つ間も二人にとっては愛を確かめる大切な手段。どうかお幸せに。>と、こちらは並選を下さった方の批評。実際の光景を見て作った句として批評文を書いて下さった様です。

実は、作者の実体験から作った句かどうかということは、句を研究する上では大切な場合もあるでしょうが、句を鑑賞する上ではどちらでもいいことなのです。大切なことは、どれだけ句の世界を味わい、楽しんで頂けたかということだと思います。その点で、お二人の方はそれぞれに句を楽しんで頂けたようで、作者としてはとても嬉しいことなのでした。 

次回の予定 

オンライン火星句会 3月15日(火) 兼題「春の鹿」

兼題「寒卵」 オンライン火星句会 2022/01/18(火)2022年01月20日 11:13

今回は参加者22名、全66句の句会になりましたが、実は1名の見学者がいらっしゃいました。それはNHKのドラマ班の方で、秋のドラマ制作のために句会の雰囲気を知りたいということなんだそうです。今月は対面での句会を予定していたのが、オミクロン株による感染者の急増により、急遽オンラインでの開催に変更になりましたが、NHKの方にはかえってその方がよかったかもしれません。オンライン句会はまだそれほど一般的ではないでしょうから、NHKの方には大いに参考になったのではないでしょうか。会の運営については、主宰者である紗希先生のお力が大であることは、言うまでもないことですが。

今回もなかなか難しい季語でしたが、私も3句投句しました。けれども、ここに掲載できるのは下の2句だけでした。 

 寒卵誰の夢見て眠るらん

冬-寒卵 この句は紗希先生も入れて5人の方から並選を頂きました。特選を下さった方がいらっしゃらなかったのは残念でしたが、この日は5点句が最高でしたから、嬉しくはなかったと言えばうそになります。

<かわいらしい。卵が夢を見ている見立て><優しい眼差しを向けている者の優しさ><ほんわりと暖かさを感じます。眠っているのが卵なのか、それとも他の誰かなのか>といった言葉を頂きました。紗希先生からは、<大いなる命の連帯><とても素敵な句>といった批評も。夢を見ているのは卵なのか、何処かの恋人同士なのか。色々に考えられますが、正解はお任せします。

 初鴉基地の向こうを啼き渡る

新年初鴉 歳時記を読んでいると、この季語に出くわしました。普段は不吉な鳥として嫌われる鴉が、元日の日だけは神鴉として喜ばれるという、人間の身勝手さが面白くてこの句を作ってみました。この句はお一人の方から並選を頂きました。

我が家は米軍○○〇補給廠の近くにあるのですが、基地内の広い空き地を飛んでいた鴉を詠んだ句ですというと嘘が混じりますが、大体はそんなところなのです。コロナも大変ですが、世界のあちこちできな臭い匂いがいっぱいです。そんな時代の重苦しさを句にしてみました。というのは本当のことですが、それが成功しているかどうかは、皆さんのご判断にお任せします。 

次回の予定 オンライン火星句会 2月15日(火)兼題「春寒」

兼題「雑炊」 火星句会 2021/12/7(火)2021年12月11日 09:08

今回は前々回と同様対面での句会でしたが、前々回と同様に投句と選句の部分はオンラインで済ましておいて、いきなり合評から始まる句会となりました。当日、選句の結果がプリントアウトされた資料が配布されて始まる訳ですが、うまくプリントするのがなかなか難しくて、紗希先生苦戦中のようです。全部オンラインでやるなら、ほぼ完璧なプログラムが出来上がっているのですが、一部だけ対面での句会となると適切な資料作りが難しい。こういう所は、句会の主宰者である紗希先生に全面的にお任せで、私達参加者はただ便利に利用させて頂いているだけになります。

それにしても、選句までネットで済ませておくこういうスタイルは、これから主流になって行くのではないでしょうか。(もうなっている?)と言うのも、選句に十分な時間をかけることが出来るからです。例えば100句もある投句から20分で選句しなさいとか、初心者にはとても無理という句会もあったりします。私の場合にはまず季語の知識が乏しいので、十分な理解をしないまま選句してしまいがちです。今は季語を調べるのもネット環境があれば簡単に出来ますから、十分に内容を理解したうえで選句する方がよいのは、言うまでもありません。

さて、そんなこんなで今回の投句参加者は22名。私も3句投句しましたが、ここに掲載できるのは下の1句だけでした。

 

雑炊や鍋の混沌そのままに

 冬雑炊 この句は、紗希先生から並選を頂きました。混沌とは、①物事が入り混じってハッキリしないこと。もやもや状態 ②天地創造の神話で天と地が分かれていない状態を言います。私としては、②の意味を踏まえつつ、表は①の意味で句作りをしたかったのですが、作者のこまっしゃくれた意図など気にもかけず、<おいしい鍋だったのですね><本当にそうだなと思う>と、おいしい鍋と雑炊の完成を喜んでいただきました。俳句は、具体的で単純に作る方がいいみたいです。 

次回の予定 2022年1月18日(火) 兼題「寒卵」

*対面での句会を予定していましたが、オンラインに変更。(1/14)

兼題「冬菫」 オンライン「火星句会」 2021/01/19(火)2021年01月22日 11:22

コロナ第三波が日本列島を蹂躙している中、「火星句会」がオンラインで開かれました。初句会ですね。新年の挨拶をしてPCの画面を覗くと、何かが違う。何だろうと思ってよく見ると、紗希先生がメガネをしていらっしゃる。(笑)後でブルーライト対策だと説明されましたが、紗希先生意外にもメガネっ娘。よくお似合いでした。

参加者は25名。この日の私の投句は、以下の3句でした。 

冬すみれ香港の風凍りつく

冬-冬すみれ この句は、紗希先生も入れて3名の方に特選を頂き、1名の方に並選を頂きました。<冬すみれに女性活動家を感じます。事態に心が痛みます。>と評して頂きましたように、周庭(しゅうてい)さんら、香港の民主派活動家の人たちを「冬すみれ」に象徴させた句です。紗希先生には、<とてもいい句><俳句が社会を詠むことができることを証明する句>と評価して頂きました。また、「冬すみれ」と「凍る」が季重なりになっているが、<このままでぜひ><「凍りつく」を比喩でなく使いたいほど>と評して頂きました。

冬すみれ君の名を呼び呼びて闇

この句は、前の「香港」の句と連作した句です。しっかり作れば単独でちゃんと読める句になるのでしょうが、この句の場合はまだまだだったようです。それでも紗希先生から、<「呼び呼びて闇」の調べがよい>と評して頂きました。この句は、実はテレビで見たある光景が元になっています。周庭さんを乗せた護送車を自転車で追いかけながら、中にいる周庭さんに悲痛な声で呼び掛けている数人の集団を、カメラが捉えていたのでした。その声は、まだ私の胸の中に反響しています。

子が笑う階段下の冬すみれ

この句は、1名の方に特選を頂きました。「子が笑う」が大雑把なので何とかしたいと言う方と、そこがとても良いと言う方とに分かれました。紗希先生は、「子がしゃがむ」ではどうかということでしたが、「階段下の冬すみれ」には<心をつかまれた>と評して頂きました。 

次回の予定

2021年2月16日(火) 火星句会 兼題「春泥」

兼題「立秋」第三回オンライン「火星句会」 2020/08/11(火)2020年08月19日 09:36

例年ですとこの時期、紗希先生は「俳句甲子園」で忙しく、句会は丸一箇月お休みになっていたようですが、今年はエコナ禍のために「俳句甲子園」はオンラインになったそうで、紗希先生は松山に帰省中でも、「火星句会」もオンラインでやれるということで、急遽句会が計画されました。この日、紗希先生はご実家の松山からご参加でした。オンライン句会の功罪については、機会があれば簡単にまとめられればと思っていますが、どうなりますか。この日の投句者は22名。私の投句は以下の3句でした。


○立秋や茫茫の野に風を聴く

秋-立秋 この句は、紗希先生も入れて2名の方に並選で採って頂きました。<「茫茫の野」という場面設定がうまい。><スケールの大きな句><心で聴いている>等、好意的な批評を頂きました。

○立秋や音無き原に鳥も見ず

秋-立秋 この句はどなたも採っては下さらなかったのですが、「茫茫の野」の句の続きであるということは理解して下さっているようでした。私としては、季節の変わり目のエアポケットのような不思議な時間・空間を描いてみたかったのですが、紗希先生からは、<「鳥も見ず」では何もなく寂しい。例えば「鳥一つ」のように動物が少しいた方が秋らしさが出る>とアドバイスを頂きました。まあ、私の心情的には、何も見ずなんですが。

○思ひ出も語ることなく墓洗ふ

秋―墓洗ふ この句は特選で1名の方、もうお一人の方に並選をいただきました。特選を下さった方は、<いつも通り洗い終わってしみじみと感じているとか、悲しみが強すぎてまだ言葉に出来ないとか、色々に考えられる>と受け止めて頂きました。紗希先生からは、<「語ることなく」ではなく、「語る人なく」としてはどうか>とアドバイスを頂きました。「こと」ではなく、「人」ではどうかと私も色々に推敲はしていたのですが、これも心情的にはより寂しい方を選んだ結果こうなったのでした。

 

次回の予定

○火星句会 9月15日(火)兼題「桔梗」

○NHKカルチャー 9月24日(木)兼題「蟻」(7月中止分)